植物園へ沙羅双樹探しの旅: 夏椿と七段花
植物園へ沙羅双樹探しの旅: 夏椿と七段花
- 沙羅双樹と夏椿について違いが分かる
- 初夏の富山県中央植物園の魅力をご紹介
「沙羅双樹」って聞いた事ありませんか?
平家物語の冒頭に出てくる「祇園精舎の鐘の聲(声)、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」の沙羅双樹です。
平家物語の冒頭文の意味
「祇園精舎の鐘の音には、この世に永久不変なものはないという響きがある。沙羅双樹の花の色は、どんなに栄えている者も必ず衰えるものである道理をあらわしている」
先日テレビで「沙羅双樹」に例えられる「夏椿」が京都のお寺で見頃〜というニュースを見て、富山県中央植物園にも夏椿があるはず!と探索の旅に行ってきましたのでご紹介します。
沙羅双樹と夏椿は別物?
沙羅双樹(さらそうじゅ)と夏椿(なつつばき)は別の植物です。
沙羅双樹と夏椿の違いをご存知ですか? 私も無知でしたので、調べてみました。
沙羅双樹はインドの中北部からヒマラヤの暑い地域に分布し、日本では温室環境のある植物園でしか見られません。
日本で見られるのは、滋賀にある「水生植物公園 みずの森」や東京の「新宿御苑」ですが、現在も見れるかどうかは不明です。
日本では2003年4月にみずの森で初めて開花し、ここでしか見ることができない花の一つでした。小さな淡い白黄色の星形の花は、ジャスミンティーにも似た芳香を有し、花後には、羽根突きの羽根に似た大きな翼をもつ実が結実します。(2代目に植え替え後、開花が観察できていません。※2022年現在)
https://www.seibu-la.co.jp/mizunomori/zukan/h005.html?TB_iframe=true&width=776&height=596
仏教三大聖樹のひとつサラソウジュが、熱帯低地のコーナーで咲き始めました。クリーム色の小さな花が高い枝で咲いています。開いた時の大きさで1.5cmほど。じっくり探してみてくださいね。滝の横にかかる橋の上からもご覧いただけます。釈迦が入滅(亡くなった)場所に植えられていたと言われています。インド原産のフタバガキ科の植物です。
https://fng.or.jp/shinjuku/2022/05/04/20220504/
日本では気候が合わないため、沙羅双樹の代用として夏椿が植えられてきたそうです。
項目 | 沙羅双樹 | 夏椿 |
学名 | Shorea robusta | Stewartia pseudocamellia |
科 | フタバガキ科 | ツバキ科 |
原産地 | インド、東南アジア | 日本、中国 |
分類 | 常緑高木 | 落葉広葉、小高木 |
樹高 | 20~30m | 10~20m |
葉 | 5~10cm、卵形~長楕円形、先端が尖る | 4~12cm、長楕円形、先端が鈍頭 |
花 | 5弁、白~淡黄色、直径8~10cm、1日花 | 5弁、白~淡紅色、直径5~6cm、1日花 |
開花時期 | 3~7月 | 6~7月初旬 |
その他 | 仏教の聖樹とされる | 別名:ナツツバキ |
- 沙羅双樹は日本で自生しないが、夏椿は日本全国で栽培されている
- 夏椿の花は、一日で散ってしまうことから、「儚さ」の象徴とされている
- 夏椿の花言葉は「愛らしさ」「はかない美しさ」「哀愁」(沙羅双樹は日本の花ではないので花言葉が設定されていない)
ここでふと疑問。
日本では温室でしか見ることが出来ない沙羅双樹が、なぜ鎌倉時代に書かれた平家物語で登場するのでしょう??
当時の作者が、仏教経典や中国の文学作品を通じて沙羅双樹の存在を知り、日本に自生しない沙羅双樹を登場させることにより物語に深みを持たせたのではないのでしょうか。
中央植物園の夏椿
さて中央植物園の夏椿を見るのは初めてです。
入口でもらった「みどころの植物のごあんない」のマップを頼りに散策開始です。
ところが・・・
マップに載ってない!(笑)
HPの植物の見どころ(6月)を参考に「ミズナラ・ブナの森」方面へ
一日花というくらいなので、地面に花が落ちているところと探せば良いのでは?
と、足元に注意して歩いていると・・・
↓ありました! 予想どおり地面に沢山の花が散っていました。
案内看板にも沙羅双樹とは全く異なる種類と明記。
↓場所はこのあたりです
中央植物園の6月の花々
せっかくこれたので、初夏の中央植物園を散策して帰ります。
年に何回か足を運ぶので、年パス(友の会特典)で良いのでは?と思う気持ちと、荷物を増やしたくないという断捨離の精神の狭間で心を揺らしながら進みます。
初夏はとても緑が映えます、緑に活力をもらえるような気がして好きな季節です。
植物や花の独特の香りも好き。(田舎育ちだからだと思います(笑))
終盤で、ふと紫陽花に目が留まり、太閤山ランドの紫陽花を思い出しました。
そろそろ七段花の時期、太閤山ランドに行ってこようかーと思った瞬間。
ここにも咲いてるではありませんか・・・シーボルトが「日本植物誌(フローラ・ヤポニカ)」で紹介した幻の紫陽花、七段花(シチダンカ)!! ここは植物園でした・・・
まとめ
沙羅双樹の花は日本では見ることが難しく、その代用で夏椿が植えられていることが分かりました。沙羅双樹の奥深さに驚かされ、いつか本物の沙羅双樹を見てみたいと思います。
夏椿もまた一日花で風情があり、とても素敵です。
地面に落ちている花を見かけたら、それは夏椿かもしれません。忙しい毎日、たまに足を止めて、その儚い美しさに思いを寄せてみてはいかがでしょうか。